ダ・ヴィンチ・コード

解読できる聡明さを備えた者だけに読む資格が与えられる!(中巻P84)


 

第二部:中巻

暗号解読の旅

暗号理解のキーワード

クリプテックス

■5弁の薔薇の宝箱
■聖杯(サングリアル)
■13日の金曜日
■ガーゴイル
■聖書
■コンスタンティヌス
■異教の痕跡

最後の晩餐の謎

■男女を表す象徴の原型
■マグダラのマリア自身による福音書
■王族の血を引くマグダラのマリア
■メロヴィング王朝
■ウォルト・ディズニー

クリプテックスの鏡像筆記

■レスター手稿=反転筆記

 

クリプテックス=ダ・ヴィンチの設計

そこに彫り込まれた象嵌細工を、ラングドンは驚嘆しつつ眺めた。5弁の薔薇だ。
同じ形のものを幾度も見たことがある。
「5弁の薔薇」=シオン修道会における聖杯の象徴だ。(p57)

作りも謎めいているが、さらに目を引くのは側面の模様だった。
5個の円盤には、どれも同じく、意外な文字列=アルファベット26文字=が丁寧に彫りこまれている。(p70)
酢(ビネガー)とパピルス。クリプテックスを壊そうとすれば、ガラス瓶が割れ、あっという間にビネガーがパピルスを溶かしてしまう。
中の情報を取り出すには、正しい5文字のパスワードを知るしかない。
5個のダイヤルに26文字ずつ刻まれているから、26の5乗の組み合わせがある。約、1200万通り。(p76)

GRAIL=聖杯
VINCI=ヴィンチ
VOUTE=アーチ型天井

同じだった。クリプテックスは固く閉じられたままだ。(p102)

GRAIL GRAAL GREAL VENUS
MARIA JESUS SARAH

どれを試してみても、円筒(クリプテックス)は微動だにしなかった。(下p51)

 

■5弁の薔薇の宝箱
薔薇の最古の品種のひとつである浜梨(ロサ・ルゴサ)は、花びらが5枚で五角形の対称性を備えており、導きの星である金星と同じく、図像学的に女性との強い結びつきがある。
また、
薔薇は正しい方向や人を導くという概念とも深いつながりを持つ
羅針図(コンパス・ローズ)は旅人を導くものであり、子午線(ローズ・ライン)も助けになる。
こうした理由から、秘密、女性、導きなど、多くの意味合いで
薔薇は聖杯を表している。

「5弁の薔薇はシオン修道会が用いる聖杯の象徴だ。マグダラのマリアだよ。その名が教会によって禁句とされたために、マグダラのマリアはさまざまな変名でひそかに表されるようになった。杯、聖杯、薔薇などだ」

薔薇はヴィーナスの五芒星形や、方位を示す羅針図と結びついている。
薔薇を表す単語は、英語でも、フランス語でも、ドイツ語でも、その他多くの言語でもROSEだ。
R
OSEはギリシャ神話の性愛の神エロス(EROS)のアナグラムでもある。

■サングリアル=聖杯(ホーリー・グレイル)=サン(聖なる)グリアル(杯)
クレメンス5世の強硬な弾圧と壊滅作戦は強烈だったけれど、騎士団には有力な支持者がいたので、一部の者はどうにか追求を免れた。
騎士団の力の源と思われる秘密文書こそが、クレメンス5世のほんとうの標的だったが、結局それは手に入らなかった。
文書がどこへ行ったか?答えを知っているのはシオン修道会だけだ。
千年にわたってこの秘密にまつわるさまざまな伝説が伝えられてきた。
やがて、文書とその力や秘密が、合わせてひとつの名前で呼ばれるようになった。
それがサングリアルだ。
サングリアル?
フランス語のサンとかスペイン語のサングレと関係があるのかしら。
両方とも血という意味だけど。(上p294)
サングリアルというのは昔のことばだ。長い間に変化して、今は別の言い方になっている・・・・
もっと現代的な呼び名=「聖杯」にね。

聖杯とは、イエスが最後の晩餐で使い、その後アリマタヤのヨセフが十字架上の血を受けた杯=聖杯はキリストの杯(p6)

聖杯の探求は人類の歴史上最大の宝探しと言ってよい。
聖杯は伝説を生み、戦いを引き起こし、生涯を賭けた冒険に人々を駆り立てた。(p8)

「じゃあ、聖杯伝説はすべて、王家の血について語っているわけ?」
「そのとおり。サングリアルという言葉は、聖なる(SAN)杯(GREAL)と分解できる。
だが最も古い形では、この言葉は別の位置で区切られていた」
Sang Realは王族の血という意味だ。(p166)

サングリアルSangreal・・・・王家の血Sang Real・・・・聖なる杯San Greal。
全ては結びついている。(p170)

■13日の金曜日
14世紀になると、騎士団の力が肥大化しすぎたため、当時の教皇クレメンス5世は何らかの作を打ち出す腹を決めた。教皇は命令を記した極秘の教書を発行し、ヨーロッパ全土の軍勢に対して、
1307年10月13日の金曜日にいっせいに開封するよう働きかけた。
13日の未明、各地で教書の封印が解かれ、恐ろしい内容が明らかになった。
「騎士をひとり残らず捕まえて、罪を告白するまで責め苦を与えよと神が命じた」
その日のうちに無数の騎士が捕らえられて残忍な拷問を受け、やがて異端者として火あぶりの刑に処せられた。この惨事は現代の文化にも余韻を残しており、13日の金曜日は不吉だと考えられている。(上p293)

■ガーゴイル
雨の降りしきる中、祖父に連れられてノートル・ダム大聖堂の頂上へ出かけたことがある。
「プリンセス、あの変な怪物を見てごらん」
「喉からおかしな音が聞こえるかい」
「うがいをしているんだよ」
「うがいをするは英語ならガーグル、フランス語ならガルガリゼ、だからガーゴイルなんて妙な名前がついたんだ」(p121)

■聖書
「聖書は人の手によるものだということだ。神ではなくてね。雲の上から魔法のごとく落ちてきたわけではない、混沌とした時代の史記として人間が作ったもので、数限りない翻訳や増補、改定を経て、徐々に整えられた。聖書の決定版というものは、歴史上一度も存在していないのだよ」

「イエス・キリストは恐るべき影響力を備えた歴史上の人物であり、恐らく古今東西を通して最も謎に満ち、霊的な力に富んだ指導者でった。預言にあるメシアとして、その教えは生き続け、多くの王を放逐し、何百万もの人々を導き、新たなる思想を生み出した。ソロモン王とダヴィデ王の末裔であるイエスは、ユダヤの王たる正当な権利を持っていた。各地にいた数千の信者がその生涯を記録したのも当然だ」

新約聖書を編纂するにあたって、80を超える福音書が検討されたのだが、採用されたのは、それに比すればごく僅か、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの各伝だけだった。(p130)

■コンスタンティヌス
今日の形に聖書をまとめたのは、異教徒のローマ皇帝であったコンスタンティヌス帝だ。
コンスタンティヌスは生涯を通じて異教徒で、抗う気力のなかった死の床で洗礼を受けさせられたにすぎない。当時のローマの国教は太陽崇拝で、不滅の太陽神を信仰し、コンスタンティヌスはその大神官だったが、折悪しく、宗教戦争がローマ帝国に蔓延しつつあった。
イエス・キリストの磔刑から3世紀を経たその頃には、キリスト教の信者がすさまじい勢いで増えたために、異教徒との争いが頻発し、激しさのあまりローマをふたつに分断させかねないまでになっていた。コンスタンティヌスとしても何か手を打たざるをえず、やがて
キリスト教を公認し、帝国の統一に利用しようとした。(p131)

■異教の痕跡
キリスト教で使われる象徴に異教の痕跡が残っているのはまぎれもない事実なんだよ。
エジプトの太陽神の頭上にある円盤は、カトリックの聖人の光輪と化した。
イシスは奇跡的な方法で息子ホルスを身ごもったが、その授乳の姿を描いた壁画は
今日の聖母子像の原型となっている。
カトリックの典礼のほとんどすべての要素は、司教冠や祭壇や栄誦、そして神を食べる行為である聖体拝領も、かつての神秘的な異教から直接受け継がれたものだ。(p132)

幼子ホルスを抱くイシス (左)
幼子イエスを抱く聖母マリア (右)


最後の晩餐の謎

「聖杯は女性なんでしょう? 最後の晩餐に描かれているのは13人の男性よ」
「この人は誰なの?」「マグダラのマリアだ」(p152)
「イエスとマグダラのマリアが対照的な服装をしているのがわかるかね」
ティービングは中央のふたりを指差した。

たしかに、ふたりの服の色は正反対だ。イエスは赤い長衣に青いマントをまとっている。マグダラのマリアは青い長衣に赤いマントだ。
「不思議な点もある。イエスとその妻は、腰のあたりで接しているらしいにもかかわらず、上半身を遠ざけ合っている。あたかもふたりの間に、無意味な空間を切り取りたいかのように」
ティービングが輪郭をなぞってみせるまでもなく、ソフィーは悟った。まきれもないの形が絵の中心にある。

絵の中央に鮮やかに現れたのは、見まちがえようもない巨大なMの字だった。(p154)
M=マグダラ、マリア、マトリモニオ(結婚)・・・

最後の晩餐

最後の晩餐(修復後)

 

■男女を表す象徴の原型

この象徴は、男神の名でもあるマース(火星)と女神の名でもあるヴィーナス(金星)を表す古代の天文記号に端を発している。

∧ これが男性を表す記号だ。簡略化した男根だよ。

この記号は、正式には剣として知られていて、攻撃性と男らしさを表している。
男根の象徴なのに、いまも軍隊で制服の階級章に使われているほどだ。

V 女性の記号はこれとは逆向きのものだ。これは杯と呼ばれている。

これは椀や器に似ているが、より重要なのは女性の子宮の形にも似ているということだ。

伝説によれば、聖杯とは文字通り杯、ただの器だ。でも聖杯が杯だという伝承は、それにまつわる真実を守るための寓話なんだよ。つまり、それよりはるかに重要なものの比喩として杯を使ったわけだ。
「ある女性だということね」(p142)

■マグダラのマリア自身による福音書
そしてペテロは言った。
「わたしたちの知らないところで、ほんとうに主は彼女と語り合っていらっしゃるのか。
わたしたちは態度を改め、こぞって彼女のことばに耳を傾けるべきなのか。
主はわたしたちよりも彼女を気に入っておられえるのか」

レヴィは答えた。「ペテロよ、あなたはいつも激しやすい。
かの女性を敵のごとく見なして張り合っているのが見てとれる。
もし主が彼女を尊ぶべきとなさるなら、それを拒むあなたはいったい何者か。
主はまちがいなく彼女を知り尽くしている。だからこそ、わたしたちよりも彼女を愛したのだ」

「福音書に記されたこの時点で、イエスは自分が間もなく捕らえられ、処刑されると察していた。
だから、死後にどう教会を運営していくべきかをマグダラのマリアに伝えている。
手の加わっていないこの種の福音書によれば、
キリストが教会を設立するよう指示した相手はペテロではない。マグダラのマリアだ
イエスは男女同権論者の草分けだ。教会の未来をマグダラのマリアの手に委ねるつもりだった」

「ペテロがマグダラのマリアをどう思っていたかを、ダ・ヴィンチが熟知していたのがよくわかる」

ペテロが脅しつけるような様子でマグダラのマリアに迫り、刃の形にした手を首へ突きつけている。岩窟の聖母に描かれていたのと同じ、威嚇のしぐさだ
「ここも見てごらん」続いてラングドンは、ペテロとほかの弟子たちの間を手で示した。
目を細めたソフィーは、そのあたりから一本の手が出ているのに気付いた。
「この手が持っているのは短剣?」
「そうだ。さらに奇妙なことに、手の数をかぞえてみれば、これが誰の手でもないのがわかるだろう。体がないんだよ。
謎の手だ」(p162)

マグダラのマリア

短剣を持つ謎の手

■王族の血を引くマグダラのマリア
ソフィーは驚いた。「ベニヤミン族の出身だったの?」
「そうだ。マグダラのマリアは王族の血を引いている」
「知ってのとおり、
マタイによる福音書は、イエスがダヴィデ家の出であると述べている
つまり
ソロモン王=ユダヤ人の王の末裔だ。
強力なベニヤミン族と姻戚になることによって、イエスはふたつの王家の血筋を融合させて、王位に対する正当な権利を持つ強大な政治的統一体を作り上げ、ソロモン王に遡る王統を復活させようとした」

「聖杯伝説とは、王家の血の伝説だ。
聖杯伝説がキリストの血を受けた杯について語るとき、それが指しているのは、マグダラのマリア=イエスの聖なる血脈を宿した子宮なのだよ」

「でも、キリストの血が受け継がれるためには・・・」「子供がいなくてはならない」
「それこそが、人類の歴史上、最大の隠蔽だ。
イエス・キリストは結婚していたばかりか、父親でもあった。マグダラのマリアは聖なる器だ。
イエス・キリストの血脈を育んだ杯だった」

シオン修道会によれば、イエスの磔刑時、マグダラのマリアは妊娠していたという。
まだ生まれぬキリストの子の安全のために、パレスチナを離れるしかなかった。
イエスが信頼していたアリマタヤのヨセフに助けられて、そのころガリアと呼ばれていたフランスへひそかに渡り、ユダヤ人にかくまわれた。そしてまさにここフランスで、ひとりの娘を出産した。名前はサラだ。(p175)

サングリアル文書には何万ページにも及ぶ資料が含まれているという。
4つの巨大な櫃(ひつ)に分けて運ばれたという目撃談もある。
そして、その文書が収められた
4つの櫃こそ、テンプル騎士団がソロモン神殿の廃墟で発見したものなのね?

■メロヴィング王朝
「でも、聖杯はマグダラのマリアのことなんでしょう?探しているのは文書なのに。
なぜ聖杯の探求なんて言い方をするのかしら」

「聖杯の探求の目的は、マグダラのマリアの遺骨の前でひざまずくことだ。貶(おとし)められ、失われた聖なる女性に心からの祈りを捧げるために、旅を続けたのだよ」
「いつの時代でも、マグダラのマリアを・・・・不当に扱われ、おのれの家系の正当な権利の証とともに葬られた女王を・・・・見つけ出すことだった」

「シオン修道会の会員はサングリアル文書とマグダラのマリアの墓を守るというつとめをずっと果たしてきたのね」

「修道会にはもっと重要な義務もあった。血脈そのものを守ることだ。キリストの子孫は絶えず危険にさらされていた。もし血筋が続けば、イエスとマグダラのマリアの秘密がいずれ明るみに出て、神の子たるメシアは女性と交渉を持たなかったという根本的な教義が揺るがされると教会が恐れていたからだ」

「とはいえ、キリストの血脈はフランスでひそかに受け継がれ、やがて5世紀に大胆な動きを示した。フランス王家と姻戚関係を結び、メロヴィング王朝を創始したのだよ」
ソフィーは驚いた。「メロヴィング王朝はパリを築いた王朝よ」(p179)

今日のシオン修道会は重大な義務を負っている。三重の責任だ。サングリアル文書を守ること。マグダラのマリアの墓を守ること。そしてもちろん、キリストの血脈、すなわち今も生き延びているメロヴィング王家の後裔を守ること。(p180)

■ウォルト・ディズニー
ウォルト・ディズニーは聖杯の物語を未来の世代に伝えることをひそかにライフワークとしていた。生涯を通じて、ディズニーは現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと賞賛された。
ふたりとも時代に先駆けた存在であり、比類ない才能を持った芸術家であり、秘密結社の一員であり、そして何より、大のいたずら好きでもあった。
レオナルドに劣らず、ウォルト・ディズニーも作品に秘密のメッセージや象徴をまぎれこませるのを好んだ。

ディズニーがシンデレラ眠れる森の美女白雪姫といった、いずれも神聖な女性の受難を扱った作品を制作したのは偶然ではない。
象徴学の心得などなくとも、白雪姫が=毒入りのリンゴを食べたために恩寵を失った王女が=エデンの園におけるイヴの堕落を強く暗示しているのは理解できる。
また、主人公オーロラ姫にローズという仮の名が付けられ、邪悪な魔女の手から守るために森の奥に隠される《眠れる森の美女》が、子供向けの聖杯の物語であるのも明らかだ。
《リトル・マーメイド》の中で、アリエルが海中の洞窟に隠していた絵=悔悛するマグダラのマリア(ラ・トゥール)(p187)

ディズニー映画「リトル・マーメイド」

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作
〈悔悛するマグダラのマリア〉


クリプテックスの鏡像筆記

薔薇のしるしの下に隠される・・・

箱をあけ、蓋の内側を調べた。平たい。だが、箱を動かしたとき、蓋の裏のちょうど真ん中に、小さな穴らしきものがあるのがわかった。蓋を閉じ、表側から象嵌を調べたが、穴は見当たらなかった。
木箱をテーブルに置いて部屋を見まわすと、紙束を綴じているクリップが目に入った。注意深くクリップを伸ばし、一端を穴に差し込む。それからそっと押した。ほとんど力を入れぬうちに、何かがテーブルへ落ちて小さな音を立てた。蓋を閉じ、落ちたものに目をやった。パズルのピースを思わせる木片だ。蓋からはずれた木製の薔薇だった。

薔薇がなずれてむき出しになったくぼみには流麗な筆致で、見たこともない言語による4行の文が彫りこまれていた。(p212)

数々の卓越した才能を持つダ・ヴィンチは、自分以外のほとんど誰も判読できない鏡像筆記の達人でもあった。

An ancient word of wisdom frees this scroll
and helps us keep her scatter'd family whole
a headstone praised by templars is the key
and atbash will reveal the truth to thee

古(いにしえ)の英知のことばがこの巻の封を解き
離散せる一族を集める助けともなろう
テンプル騎士の讃えた墓石が鍵となり
アトバシュが汝に真実を明かすだろう

 

■レスター手稿=反転筆記
ハーヴァード大学の中退者であるビル・ゲイツが貴重な入手品のひとつを大学のフォッグ美術館に貸し出した。
その品とはアーマンド・ハマー財団主催のオークションで購入したばかりの、18枚の紙だった。入札価格は3千80万ドル。
その紙に文字を記したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
18枚の紙葉はレスター伯がかつて所有したことから、レスター手稿と呼ばれている。(p258)

反転筆記による記述